徒然なるままに 心に移りゆく いかがわしいことを 日々書き綴ります
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いつも心に雷獣を。
プロフィール

ぴの

Author:ぴの
現在は暁のヨナ、ハクヨナ中心。
歴史モノ、和服好き属性あり。
昔は幕末書いてた事もあり。
つーことで、銀魂も好き。
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いつものように始まった酒盛りはいつものように次第に加熱し、黄龍の力で底なしのゼノと、大人組のハクとジェハ以外はもはや立っているのがやっとの状態になっていた。

特に肌の白いキジャは夜目にも顔全体が紅潮しており、酔いが回っているのが誰の目にも明らかだ。

「ま、まだまだぁ!」
「目が据わってるぞ。もう寝ろ、白蛇」

ムキになってまだ自らの杯に酒を注ごうと立ち上がるキジャを、ハクは力一杯押し留めた。

「そうだね。キジャとヨナちゃんはもう休んだ方がいいよ」
「私はそんなに酔ってないわよ?」

ジェハに反論するヨナはこちらもゆらゆらと杯を持ったまま身体を揺らし、今にも眠りに落ちそうに見えた。

「はいはい。酔っ払いはみんな酔ってないって言うんです。これ以上潰れるまで飲むとか、俺が許しません。もう寝て下さい」

ハクはヨナの手から杯を取り上げると、これ以上ヨナに酒を飲ませまいと残りの酒を飲み干して杯を空にした。

「むぅ……」

それを期に宴もお開きとなり、それぞれが飲み食いした器を片付けている脇で、ハクは思い立ったようにふらりとその場を離れようとする。

「どこに行くの?」
「ちょっと用足しにね……」

お酒を持ったままで……?

用を足すと言う割に酒の入った瓶を持ったまま天幕から離れようとするハクを不思議に思いつつも、ヨナは酔いで思考がそれ以上回らず、ただぼんやりとハクの背中を見送った。すると、しばらくしてゼノが肩を叩いて密かに耳打ちをする。

「娘さん。兄ちゃんは王様に会いに行ったから。たぶん河原の方に……」
「!!」

ヨナは予測外のゼノの言葉で瞬く間に酔いが覚め、みるみる頭の芯が冷えてゆくのを感じた。


王様ーーーー。


現在の高華国の国王はスウォンだが、こんな鬱蒼とした山の中にスウォンが居るわけはない。だとすれば、王様とは……。

最後まで聞き終わる前に慌てて駆け出そうとするヨナに、ゼノは焚火にくべられて火のついた薪を一本引き抜くと、ヨナに向けて差し出した。

「娘さん、足下危ないからこれ持って行くといいから」
「ありがとうゼノ」

ヨナが駆け出すと、ジェハとゼノが話し声が後ろの方で遠ざかって聞こえた。

「あれ? ヨナちゃんどうしたの?」
「んーー娘さんは憚りに行っただけだから」


坂を下ると次第に足元の感触が土の感触から石ころの感触に変わり、歩きづらくなってくる。さらにせせらぎの音が大きくなる事でそこに流れる川が迫って来ていることがわかった。

酒が入っているせいか動悸がして足下がおぼつかない。ゼノが渡してくれた明かり代わりの火のついた薪がなければ、足を取られて転んだかもしれない。

普段は何も考えていないようでいてこういう時は気が回るゼノに感謝しつつ、しばらく進むとやがて月明かりに照らされた見覚えのある藍の衣の後ろ姿が目に留まった。


「ハク……」
「……なんで付いてきたんですか…姫さん」

ハクは自ら積んだと思しき堆高い石積みを前にひれ伏すと、額を地につけていた。それはかなり即席で簡略化されてはいるものの、身分の高い死者への弔いの礼のように見えた。

ゼノの言う王様、それはスウォンに弑されてこの世を去った、前王イルの事だった。

「ハクこそ、どうしてひとりでこんな事を……」
「あんたが命じたんでしょうが? 『この国の誰が忘れても俺だけはイル陛下とその娘を忘れるな』と……」

確かにヨナは以前ハクにそんな事を言った覚えがある。


それにしてもーーーー。


「だからって、父上を弔うのならどうして私を呼ばないのよ……」
「…あんたには、あの日と同じように輪の中心で誕生日を皆に祝われて、笑っていて欲しかったからですよ。きっと…この空の何処かでイル陛下も同じように思っていらっしゃる……」

身を起こそうともせず、俯いたままそんな事を呟くように語るハクを前に、ヨナは痺れたようにただ立ち尽くしていた。

持ってきた酒を石積みに振りかけると、ハクはようやく楽な姿勢で座り直す。それに応じてヨナもハクを真似るように、その石積みの前に額をつけると、ただそれだけのことなのに、その一瞬でどうしてだか涙が零れた。

「…おまえは私には父上の弔いさえ許さないと言うの……?」
「違いますよ。だけどやっぱり連れて来たらあんた、そういう顔するでしょう? 俺はそのぶっさいくな泣き顔はもう見飽きたんです。イル陛下だってそんな顔、きっと見たくねえですよ」

彼は自分の誕生日に見舞われた不幸をあえて必要以上に自分に思い起こさせまいとしてこういう事をしたのだろう。

あの夜に起こった出来事を忘れる事などできるはずがない。だけど、毎年誕生日が来るたびに同時に訪れる父王の命日よりも、今はみんなと一緒に素直に誕生日を祝えるように……と。

しかし、あえて場にそぐわない不謹慎な言葉遣いをしているハクの真意を理解しながらも、ヨナはつい挑発に乗ってしまう。

「私が真面目な話をしてるのに失礼ね!」
「泣き顔よりはまだそうやって鼻息荒くしてる方が似合ってますね」
「なんですって?!」
「さあ、もう姫さんは戻って寝て下さい。俺はお祈りが済んだら戻りますから」

どこまでも優しい声でそんな事を言うハクを見ていると、ふと主としてハクに許しの言葉を与えなければならないという気がした。

ハクの性格から考えて、あの夜起こった出来事を止められなかった事に対して、ずっと責任を感じ続けているだろうことはよくわかったからだった。

「ハク…父上が亡くなったのはおまえのせいじゃないわ……」
「………」
「だから、自分を責めなくていい。きっと父上もそう言うわ……」
「でしょうね。あの方はいつも自分の事は後回しの方でしたから……」

ハクは頷くと遠くを見る目をして、少し寂しそうな笑みを浮かべた。

「ねえ、ハク……」
「はい?」
「あの日、私の誕生日、祝ってくれてありがとう」
「急に何ですか、それ」
「父上にはありがとうって言えなかったから、おまえには言いたいの」

ヨナにとってあの日は、伝えない想いはその時に伝えないと後から取り返しがつかない事もあるという現実を知った日でもあった。

「へぇーーそうですか。あの日だけ、ですか?」
「え?」
「あんたの誕生日くらい俺で良ければ、俺が死ぬまで毎年何度でも祝って差しあげますよ?」
「じゃあ……お返しにハクの誕生日も私が死ぬまで毎年何度でも祝ってあげるわね」

すると、ハクは少し驚いた表情をしたが、同時に苦笑いを浮かべて言った。

「ほーーー。あんたそれ、自分で何言ってるのかわかって言ってます?」
「何が?」

何故かハクは盛大にため息をついて、頭を押さえる仕草をした。

「いや、いいです。何でもありません。もう戻りましょ?」
「あら、お祈りはもういいの?」
「気が変わりました。もう十分です」

天幕に戻る道すがら、気が抜けて酔いが戻って来たのか、ふらつく足下に気が付いたハクに手を引かれて歩くと、何だかますますフワフワと雲の上を歩いているような心地がしてくる。

「日も変わったんで、先に今年の分言っときますよ? 姫さん、お誕生日おめでとうございます」
「ありがとう」
「この際だから十年分くらいまとめて先に言っときます?」
「そんなズルい事許さないわ」

平然と軽口を叩くハクはすっかりいつものハクで、まるで自分だけ熱に浮かされるように酔っている事が少し悔しい。

「くくく…はいはい、じゃあ毎年直接言わせて下さいよ?」
「うん…毎年ちゃんと言ってね……」

何気なく言ってしまってから気付いた。これって何か、誓いの言葉のように聞こえるんじゃないかしら。私は何か間違った言葉遣いをしてしまったのだろうか……。

そんな事がチラリと頭をよぎったが、それ以上深く考えるには酒が回り過ぎていた。それから眠りにつくまでに、ハクと何を話したのかよく思い出せない。




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2016/06/14 06:09 ヨナss TB(-) CM(0)
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