徒然なるままに 心に移りゆく いかがわしいことを 日々書き綴ります
Free Area
いつも心に雷獣を。
プロフィール

ぴの

Author:ぴの
現在は暁のヨナ、ハクヨナ中心。
歴史モノ、和服好き属性あり。
昔は幕末書いてた事もあり。
つーことで、銀魂も好き。
ツイッター → @m_tak10
無言フォロー歓迎です。

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
--/--/-- --:-- スポンサー広告 TB(-) CM(-)
長く厳しい冬も終わり水ぬるむ季節となり、待ち焦がれた春に花も綻ぶ。そこでいつもの顔触れがいつものように寝起きする川沿いの天幕ではいつもとは少し違う催しが執り行われようとしていた。

キジャとヨナ、二日続けての誕生祝い。それは一行が酒を呑むにはこの上ない口実だったし、この日ばかりはいつも金に余裕がなく節約に節約を重ねる、一行の食卓が華やかに彩られる数少ない機会でもあったのだ。

しかし、今夜ささやかながらの誕生日の宴で祝われるべき主役は、天幕から離れた月明かりの下で物思いに沈み、夜目にも目立つ白い衣で身を小さくして座り込むと、ひとり項垂れていた。

「キジャ、ユンがもうすぐ御飯ができるって言っていたわ。こんなところで暗い顔してどうしたの?」
「姫様…私は己が恥ずかしいのです……」
「どうして?」
「私は…私は姫様の気持ちを少しも考えずに先刻まで私の誕生日と姫様の誕生日が一日違いである事をとても嬉しく思っていたのです」
「そうね、私も初めて知った時は驚いたわ。でも、それがどうかしたの?」
「まさか、姫様のお誕生日が姫様のお父君が亡くなられた日だったとは露知らず……」
「ああ……」

ヨナはキジャの気鬱の原因を察して少し表情を曇らせた。先の国王イルが弑逆によって崩御したのは高華国の民であれば、もはや誰もが知っている。だが、それが王宮の奥深くから表舞台に出た事のないイル王の一人娘、ヨナ姫の誕生日に起こった惨劇であるところまで知っているのは緋龍城で王族に接する事を許されたごく一部の者だけだ。加えて巷では生前より愚王と称されたイル王の命日など、記憶に留めている者は更に少ない。

「私は呑気に私の誕生日と姫様の誕生日が二日続く事をお祭りが二日間あるような浮わついた気持ちでいたのです……」
「そんな事、キジャが悪い訳じゃないのだから、別に気にしなくてもいいのに」
「そうは参りません姫様。姫様の気持ちを思えば私の誕生日など祝うべきではないのです…」
「もうユンもご馳走の準備をしてくれているわよ?」
「ですが日付を跨げば姫様の特別な日になると言うのにどうして何事もないかのように宴などして、飲み食いができましょう。白龍の里にいたあの頃も私の誕生祝いには里の者が歌や舞を披露して毎年盛大に祝ってくれていたのです。その余韻も冷めやらぬ次の日に姫様の御身には……」

キジャはそう言うと、まるで誕生日に亡くなったのは自らの父であったかのように龍の爪を携えた手で頭を抱えて目を潤ませた。

「……ねえ、キジャ。父上はね、亡くなる前に私の十六歳の誕生日の宴で『ヨナも立派になった』って泣いて喜んでくれたのよ。父上は誰よりも私の誕生日を喜んでくれたの……」

硬い龍の鱗で覆われたキジャの右手に触れると、ヨナはキジャにも自らにも言い聞かせるかのように穏やかに語り始めた。

「だからね、キジャ。私は自分の誕生日を嫌だとは思わない。あの日は私の今までの人生が全て壊れてしまった日だけど、私は誕生日が来るたびに、あの日、誰よりも私の誕生日を祝ってくれた父上の最期の姿を思い出すのよ。もう会う事はできないけれど、今でも私がまた一年成長できたことを、きっとこの空のどこかで祝ってくれているんだと思う」

遥かな夜空を見上げながら少し笑みさえ浮かべるヨナを見ると、キジャは思わず嘆息した。

「姫様は本当にお強いですね……」

「ううん。皆がいるから私は生きて来られたの。あの出来事がなかったらキジャにも会えなかったかもしれないし、それにね、キジャと一日違いの誕生日だなんて、本当のお兄さんができたみたいで嬉しいわ」

「おおおおお兄さんなどと滅相もない!!」
「『お』が多いわよキジャ」

頬を赤らめて盛大に動揺するキジャの背後から足音も立てずに突如ヌッと顔を出すと、ハクの冷や水を浴びせるような低い声の突っ込みが飛んだ。

「はーーー? おまえよく自分で誰彼構わず『兄と呼ぶが良い』とか言ってるじゃねえか、白蛇」
「ハク」

キジャがビクリと身をすくませたのを無視して、ハクはヨナに話を続ける。

「ユン母ちゃんが『もうすぐ飯の支度が出来るのに主役二人が戻って来ない』って言うもんで呼びに来たんですけど。邪魔しちまいましたか?」
「もう戻るところよ。でも主役はキジャでしょ? どうして二人なの?」
「どーせドンチャン騒いでるうちに日を跨いで朝になったら、そのまま姫さんの誕生日だからでしょう?」
「ちょっと…朝まで飲むつもり?!」
「姫さんは朝まで飲まないで寝て下さって結構です」
「ハク…そなたと言うやつは姫様の気持ちを考えもせずに……」
「あ?」

ハクに対して話を巻き戻そうとするキジャ遮ってヨナはキジャの手を取った。あの日、辛い思いをしたのは自分だけはない。自分と同じくらい多くのものをハクもあの日失った。それがわかるだけにあの日受けたハクの傷に触れるような話は、誰にもして欲しくはない。

「…その話はもうおしまいよ。さあキジャ、戻りましょ?」
「姫様ぁぁ…私は一生姫様について行きます!!」
「白蛇…面倒臭えヤツだな。いいから拭け、鼻水垂れてんぞ……」
「うむ!」

ハクが鬱陶しそうに差し出した手拭いでキジャは遠慮なく盛大に鼻をかんだ。天幕に近付くにつれてユンが用意する釜から漂う、いつにも増して腹の虫を刺激するいい匂いに一同はしばし料理以外の事を忘れさせた。




スポンサーサイト
2016/04/09 23:02 ヨナss TB(-) CM(0)
コメント















 管理者にだけ表示を許可する

カレンダー
08 | 2017/09 | 10
- - - - - 1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
おしながき
◆こちらには暁のヨナの二次小説、主にハクヨナ、たまにそれ以外の何かを好き勝手に置いてます。
◆原作者様、出版元には一切関係ございません。
◆著作権は放棄しておりませんので無断転載、お持ち帰りなどはご遠慮下さい。
◆一度上げた作品を気まぐれで加筆修正することがあります (なので、持ち帰り禁止)。
◆内容がお気に召さない場合は、そっと画面を閉じて下さいませ。
◆管理人は基本的に本誌は読んでいませんが、ネタバレをあまり気にしません。
◆管理人閲覧限定コメントを頂く場合、こちらからの返信は一般閲覧可となるため、公開されてもいいお名前での投稿をお願いします(内容は勿論非公開です)。それ以外の方法で返信をご希望の場合は、返信先と合わせて文中に明記して下さい。
◆以上の点を、予めご了承下さいませ。
リンク
当ブログは現在リンクフリーです。リンクして頂いた場合、事後で大丈夫なのでひと声頂けると助かります。
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。