徒然なるままに 心に移りゆく いかがわしいことを 日々書き綴ります
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いつも心に雷獣を。
プロフィール

ぴの

Author:ぴの
現在は暁のヨナ、ハクヨナ中心。
歴史モノ、和服好き属性あり。
昔は幕末書いてた事もあり。
つーことで、銀魂も好き。
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そうこうしているうちに、手元の腕時計で時刻は23時47分に差し掛かった。あと13分でこの箱が売り切れる可能性はほとんどない。

まるでおとぎ話のシンデレラにかかる魔法が0時になると解けるように、間もなくブッシュ・ド・ノエルは生ゴミに変わり、完成しつつある門松の飾り付けの前に俺は場違いな道化へと変わる。

もう観念していい加減に店じまいに取り掛かるべきだろう。ため息混じりに長机の下からレジ金を片付けるコインカウンターを引っ張り出そうと身を屈めると、一気にどっと疲れた気がするのは何故だろう。

「ハク」

不意に頭上からあるはずのない声が降ってきて、驚いて顔を上げると、そこにはファーのついたフワフワの白いコートに身を包んだ意外な人物が立っていた。

「姫さん……」

姫さんには渡したい物があったけど、門限の厳しい彼女に会うのは今日はもう無理だと諦めたのは何時間前の事だったか。そして、その彼女がどうしてこんな夜中に近いような時間にこんな場所に……。

「こんな時間にどうしたんですか……?」
「それは私のセリフだわ。何度もLINE送ったのに既読にもならないし……」
「あー、悪りぃ。このサンタ服、ポケットついてないもんで、スマホはその中だ」

姫さんにもわかるように、俺は長机の下に無造作に置いた自分のボディーバッグを指差した。音を切っていてすっかり気付かなかったが、この剣幕だと中のスマホには、姫さんからの相当な量の着信があったんだろうことは想像に難くない。

「ユンに聞いたら、今日はたぶんここでケーキを売ってるんじゃないかって言うから。でもまさかこんな時間だし、本当にいるとは思わなかったわ」
「何か御用でしたか?」

俺がいつものようにそう言うと、姫さんは明らかに気分を害した顔をした。

「御用ですって? クリスマスの夜に?! 」
「あーいや…だって、あんた門限は……?」
「見つからないように抜け出して来たのよ」
「またベランダから抜け出してきたのか? 見つかったらあんたのパパに怒られるのは、あんたじゃなくて、俺なんですけど?」
「ハクのせいなんだから、ハクが怒られればいいじゃない」

姫さんは話すうちにどんどんヒートアップして来て、俺はにわかに頭を抱えた。確かに今日の計画は事前に姫さんには話していなかったとは言え、さすがにこちらはこちらで事情はあるのだ。かと言ってその全容は、計画が企画倒れとなった今となっては説明できない。

「おい。なんつーワガママな。俺が何したって言うんだよ……」
「最近話しかけようとしても、すぐいなくなっちゃうし、ユンにはバイトしてるの言うくせに、私には何も言ってくれないし……」
「………」

そりゃそうだろ。あんたのためにバイトしてたのを、あんたに言えるわけねえだろうが。

なんていう言葉を飲み込んで、可愛らしく頬を膨らませて苦情を述べる姫さんの横顔を見ていると、姫さんはそこから更に聞き捨てならない事を言い出した。

「全然連絡取れないから来てみたら、他の女の人とは仲良くしてるのね……」
「いつから見てたんだよ……しかも仲良くしてねえし」
「してた!」
「してませんよ」
「してたわよ!」
「あのなぁ…あんなのただの接客でしょーが」
「もう知らない!ハクのバカ!!」

ひとりで勝手に盛り上がると、姫さんは怒って帰ろうとするのを俺は手を掴んで引き止める。妙な言い掛かりをつけられた俺にとって不名誉なこの状況は、このまま捨て置く訳にはいかない。

「コラ、ちょっと待てよ。ところで、姫さん。せっかく来たならどうせだからあんた、このケーキ買ってくれません?」
「……どうしてよ…」
「あんたが買ってくれたら、俺も片付けて一緒に帰れます」

俺がそう告げると姫さんは少しの間黙りこくって悩んでいたが、結局は俺の提案を飲んだ。

「……いいわよ。でも2つも食べられないわ」
「1つは俺が食うからいいですよ」
「仕方ないわね……はい。じゃあ2つで3000円」

姫さんは半額の値札を見て、素直に財布から千円札を三枚取り出して俺に渡してくれた。奇跡的にこのブッシュ・ド・ノエルは残り3分で生ゴミになる事を免れた事になる。

「ありがとうございます、お客様」
「…じゃあもうこれで帰りましょ?」

そう言うと、姫さんは足元にあった俺のバッグを持ち出して帰り支度を手伝おうとしてくる。その中には、これもまた辛うじてゴミにならずに済みそうな、ある物が入っていた。

「あ、姫さん」
「何?」
「もう諦めてたんですよ。本当はもっと早くに渡そうと思ってたのに……」

俺は姫さんが持つバッグを開けると、リボンのついた小さな箱を取り出して姫さんの掌に乗せた。

「何これ……?」
「姫さんがいつか俺にくれたお守りのお返しです」
「私のために?」
「青金石…でしたっけ? ああいう物は男が女に贈る物だって言いましたよね? だから、今度は俺が……」
「ハク、もしかしてそれでバイトしてたの……?」
「そう。だからあんたには言えなくて……。すみません」
「そんなの気にしなくても良かったのに……」
「もうちょっとカッコつけて渡すつもりだったのに、ジジイが今日のケーキを発注し過ぎたせいで、バイト抜けられなくなっちまって……」
「そうだったの…ちっとも気付かなかったわ……」

ふと気付くと、残り1分30秒。

「ギリギリセーフですね。メリークリスマス」
「ふふっ…そうね、メリークリスマス。ここまで来てあげた私のおかげね?」
「そうっすね。感謝します」
「開けていい?」
「どうぞ」

姫さんが包みを開けると、真紅のガーネットのついた一対の金色のピアスがその姿を現した。姫さんがいつもつけている可愛いらしい物に比べるといささかデザインがシンプル過ぎるが、この際予算の都合で仕方がないと割り切って選んだ物だ。

「ピアス?」
「大したもんじゃなくてすみません。俺のバイト代だとそんな物しか買えなくて……」
「このためにわざわざバイトまでしてくれたんでしょう? 十分嬉しいわ。ねえ、つけてくれる?」
「はい」

こちら側に顔を傾けて耳朶を出す姫さんにピアスをつけてやると、姫さんは今日初めての満面の笑みを浮かべた。

「ハク、その格好だと本物のサンタクロースみたいね?」
「本物のサンタですよ? あんた限定でな」
「ぷぷっ……3000円払ったけどね」
「その文句はケーキを発注し過ぎたジジイに言ってやってくれ」

その時、0時を過ぎて駅前の街灯が一斉に消灯した。
まさにギリギリセーフのXmas。



~その後の帰り道で~

「ハクの手、冷たい……」
「そりゃあ、ずっと外に立ってましたからね。プレゼントのお返しにあっためて下さいよ」
「ええ……? じゃあ、これで足りるかしら……?」

姫さんが自分の首に巻いていたマフラーを解いて俺に渡そうとするのを押し留めると、解けたマフラーを結び直して耳元で囁いてみる。

「それより、こっちの方がいい」

そのまま姫さんを引き寄せると、不意打ちのキスをした。

「ちょ……もう、馬鹿ね」
「お返し、勝手に頂いてスミマセン」

俺がニヤリと笑うと、姫さんは頬を染めてモゴモゴと何かを呟いた。

「こんなのでいいのなら……」
「いいのなら?」
「もう……言わないっっ!!」
「くくく……」

あと数日で新しい年が来る。さっきよりも格段に温かさの増した姫さんの手を握りながら『我が人生に悔いなし』って言葉がちょっと頭かすめた。



******

ガーネットの石言葉→「忠実」「一途な愛」
さてさて、これをハクは知っていたのか、たまたまなのか……




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2016/02/26 07:11 その他ヨナss TB(-) CM(0)
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